今回は修理ではなく、私が所有しているギターを一本紹介したいと思います。
Orville by GibsonのExplorerです。
おそらく1990年代に製造されたモデルで、ボディとネックにはコリーナが使われています。
そして何より特徴的なのが、通常のExplorerとは少し違うボディシェイプ。
ボディ後方の一部が大きくカットされています。
これはEric Claptonが1970年代に使用していた1958年製Gibson Explorerを再現した、いわゆる「Clapton Cut」と呼ばれるスタイルです。
個人的にも昔から好きだったExplorerで、実は以前、このギターを参考に自分でExplorerを製作したこともあります。
今回はそんな思い入れのある一本について、Explorerの歴史やOrville by Gibsonについても少し掘り下げながら紹介します。

そもそも1958年のExplorerとは?
Explorerが登場したのは1958年。
今ではGibsonを代表するモデルの一つですが、当時としてはかなり未来的なデザインだったと思います。
現在Gibsonが製作している1958 Korina Explorer Reissueでも、ボディとネックにはコリーナ、指板にはローズウッドが採用されています。
ブリッジはABR-1、ストップバー・テールピース、ゴールドハードウェアという組み合わせです。
そして驚くのが、オリジナルの生産本数です。
Gibsonの現在の公式資料によると、1958年に出荷されたExplorerはわずか19本。
現在では非常に有名なモデルですが、最初から人気モデルだったわけではありません。
むしろ登場した時代が早すぎたギターだったのかもしれません。
その後、ロックミュージシャンがExplorerを使用するようになり、この独特なデザインが少しずつ評価されていきます。
現在では、Explorerという形そのものが一つのジャンルとして定着したように感じます。
Eric Claptonが使った1958 Explorer
Explorerというとハードロックやヘヴィメタルのイメージを持つ方も多いと思います。
しかし、Eric Claptonも1970年代に1958年製のコリーナExplorerを使用していました。
この個体が少し特殊です。
通常のExplorerにあるボディ後方の一部がカットされていました。
現在では、この形状が「Clapton Cut」などと呼ばれることがあります。
1974年前後のClaptonの写真や演奏を見ると、この特徴的なExplorerを確認することができます。
後年にはGibson自身も、この個体を再現した「Explorer Clapton Cut」を限定製作しています。
つまり今回紹介するOrville by Gibsonは、単純な1958 Explorerのコピーではなく、さらにその中でも特殊なClaptonの個体を意識して作られたモデルということになります。

Orville by Gibsonとは?
Orville by Gibsonは、日本で展開されていたGibson公認ブランドです。
「Orville」という名前は、Gibsonの創業者Orville Gibsonに由来します。
当時は「Orville」と「Orville by Gibson」の両方が存在していました。
1991年のカタログを見ると、Orville by GibsonにはGibson USA製ピックアップ、Orvilleには日本製ピックアップが搭載されていたことが確認できます。
そして、その1991年のカタログにはLes PaulやSG、Flying Vなどと並んで、Orville by GibsonのExplorer「EX」も掲載されています。
現在ではOrville by Gibson自体が生産されていないため、中古市場でしか見ることのできない国産Gibsonの一つです。
このExplorerについては寺田楽器で製造された個体と思われますが、現在シリアルを確認できていないため、ここでは製造工場については断定しないことにします。
コリーナという木材
このギターの大きな特徴がコリーナです。
1958年のオリジナルExplorerも、ボディとネックにコリーナが使われていました。
コリーナは「ホワイトリンバ」と呼ばれる木材で、Explorerだけでなく同時期のFlying Vにも使用されています。
現在でもGibsonの1958 Explorer Reissueでは、ボディとネックの両方にコリーナが採用されています。
今回のOrville by Gibsonも、ナチュラルフィニッシュから木目を見ることができます。
Explorerという強烈なボディデザインと、ナチュラルカラーの木材、ゴールドパーツ。
この組み合わせは独特です。
個人的には、ブラックやホワイトなどに塗装されたExplorerとはまた違った魅力があると思っています。
実際に弾いて感じること
このギターを弾いてまず感じるのは、ネックの太さです。
かなりしっかりとした太いネックです。
そして音も太い。
現在ピックアップはオリジナルではなく、PAFをイメージして作られた国産ピックアップへ交換されています。
そのためオリジナル状態のサウンドとは異なりますが、ギター自体が持っているしっかりした鳴りは感じられます。
もう一つ気に入っているのが、構えたときのバランスです。
Explorerは見た目だけを見ると非常に大きく、弾きにくそうに感じるかもしれません。
ところが実際に構えてみると、意外なほどバランスがいい。
座って弾く場合にも独特の収まり方があります。
奇抜なデザインだけが注目されがちですが、実際に弾いてみるとよく考えられた形なのだと感じます。
そして作りについても、やはり国産らしい丁寧さを感じます。
ネックやボディ、全体の組み上がりを見ても、非常にしっかり作られている一本です。
昔、このExplorerを参考に自分でギターを作った
このギターには、もう一つ個人的な思い入れがあります。
私は昔からEric Claptonが好きでした。
そしてClaptonが使用していた、このボディ後方がカットされたExplorerにも強く惹かれていました。
そこで以前、このExplorerを参考にして、自分でExplorerを製作したことがあります。

右側のブラックのExplorerが、そのときに作ったものです。
単純なコピーではなく、こちらはスルーネック構造で製作しました。
ボディ形状や全体の雰囲気にはClapton CutのExplorerを取り入れています。
今改めて2本を並べてみると、かなり面白いです。
当時はこのExplorerに憧れて自分で作ったわけですが、その後、知人から本物のOrville by Gibsonを安く譲ってもらえる機会がありました。
まさか後になって実際に所有することになるとは思っていませんでした。

1990年代の日本で、こんなギターが作られていた
このギターを見ていると、個人的に面白いと思うことがあります。
1958年にGibsonが作ったExplorer。
その中でもEric Claptonが使用した、ボディをカットされた特殊な一本。
それを後年、日本のOrville by Gibsonが製品として作っている。
かなりマニアックです。
Les PaulやSGを日本で作るというのは分かります。
しかし、Claptonが使用した特殊なコリーナExplorerまで日本で製品化していたというところに、当時のOrville by Gibsonの面白さを感じます。
単純に「Gibsonに似た国産ギター」というだけでは説明できないブランドだったのだと思います。
オリジナルへのリスペクトと、日本のギター製造技術。
その両方が組み合わさって生まれた一本として見ると、このギターの見え方も少し変わってきます。
今でも普通に弾いています
ヴィンテージギターや生産終了した国産ギターというと、どうしてもコレクションとして語られることが多くなります。
でも私は、このExplorerを今でも普通に弾いています。
太いネック。
太いサウンド。
そしてExplorer独特の構えたときのバランス。
眺めていても格好いいですが、やはりギターなので弾いて楽しみたい。
ピックアップが交換されていることも含めて、完全なオリジナル状態を維持するためのコレクションというより、現在も楽器として使っている一本です。
まとめ
Orville by GibsonのExplorerは、今見るとなかなか面白い存在だと思います。
1958年にわずかな本数しか作られなかったGibson Explorer。
Eric Claptonが使用した特殊なClapton Cut。
そして、それを日本で製作したOrville by Gibson。
さらに私自身、このギターに憧れて自作Explorerまで作り、その後この個体を所有することになりました。
ギターには、スペックや市場価値だけでは説明できない面白さがあります。
誰が使っていたのか。
どんな時代に作られたのか。
なぜその仕様になったのか。
そして、自分がなぜそのギターを好きになったのか。
そういった背景まで知ると、一本のギターがさらに面白く感じられます。
このExplorerも、これから大切にしながら、普通に弾き続けていきたいと思っています。
LuthiLab Memo
- ブランド:Orville by Gibson
- モデル・年代:Explorer EX / 1990年代と思われる
- 今回の記事:楽器紹介
- 主な内容:今回は修理ではなく、1958 Explorer、Clapton Cut、Orville by Gibsonの背景と所有ギターを紹介
- 今回のポイント:コリーナのボディ/ネック、Clapton Cutと呼ばれる特徴的なシェイプを持つ国産Explorer。太いネックと太いサウンド、丁寧な作りも含め、現在も実際に弾いている一本です。
