「5万円のギターに3万円の修理をするのは、もったいないですか?」
このような質問を受けたことがあります。
確かにリフレットなどの大掛かりな修理となると金額は大きくなり、その金額だけを見ると悩んでしまうかもしれません。
ですが、私は修理をするかどうかは、価格だけで判断するものではないと考えています。
まず、ギターは消耗品ではありません。
今もまだ1950〜60年台のギターが現役で使われていることを考えると、適切なメンテナンスや修理を行えば、何世代、何十年と使い続けることができる楽器です。
今回は、私が修理や調整をおすすめする理由についてお話ししたいと思います。
ギターは長く付き合える楽器です
ギターは木材という自然素材から作られています。
そのため、湿度や温度の影響を受けながら少しずつ変化していきます。
フレットは摩耗し、ナットは減り、電装部品も長年使えば不具合が出ることがあります。
しかし、それは決してギターの「寿命」ではありません。
必要なタイミングでメンテナンスや修理を行えば、これから先も十分に演奏できる状態を維持することができます。
車に車検や整備があるように、ギターにも定期的なメンテナンスがあります。
修理は「壊れたから終わり」ではなく、「これからも使い続けるため」のものだと私は考えています。
同じモデルでも、同じギターではありません
「修理代が高いなら、新しいギターを買えばいい。」
そう考える方もいらっしゃいます。
もちろん、それも一つの選択です。
ただ、仮に同じモデルを購入したとしても、まったく同じギターに出会えるわけではありません。
ギターは、多くの工程を人の手で作り上げています。
ネックを削る人、塗装をする人、組み込みや最終調整を行う人。
私も何度も工場に赴いたことがあるので分かりますが、一本一本、多くの職人の手を経て完成します。
自然素材ゆえの、木目や重さ、鳴り方にも違いがあります。
だからこそ、音や弾き心地には個体差が生まれます。
長年弾いてきたギターには、自分だけが知っている弾き心地や音があります。
その魅力は、同じモデルの新品を購入しても、そのまま手に入るものではありません。
修理する価値は、価格では決まりません
私は修理を提案するとき、ギターの販売価格をあまり気にしていません。
気にするのは、そのギターに価値を感じているかどうかです。
学生時代に祖父母に初めて買ってもらった一本。
長年バンド活動で使ってきた一本。
家族から譲り受けた一本。
あるいは、「このネックの握り心地が好き」「この音が好き」という理由でも十分です。
そうした価値は、市場価格では測ることができません。
だから私は、「5万円のギターだから3万円の修理はもったいない」とは一概には考えません。
そのギターに価値を感じているのであれば、修理をして長く付き合っていくという選択は、とても良いことだと思っています。
修理だけでなく、育てる楽しさもあります
修理は、元の状態へ戻すだけではありません。
自分だけの一本へ育てていく楽しみもあります。
例えば、ピックアップを、シングルコイルからハムバッカー仕様へカスタマイズして自分好みの音にする。
ノブやピックガードを交換して、見た目を変えてみる。
ほんの少しの変更でも、ギターの印象は大きく変わります。
「もっと弾きたくなる。」
そんな気持ちになることも少なくありません。
長く付き合うからこそ、自分らしい一本へ少しずつ育てていく。
それもギターの楽しみ方の一つだと思います。
まとめ
冒頭にもお話ししましたが、ギターは、壊れたら買い替えるものではありません。
必要に応じてメンテナンスや修理を行いながら、何十年も付き合っていける楽器です。
もちろん、修理をするか買い替えるかに正解はありませんが、その判断を価格だけで決めてしまうのは少しもったいないと私は感じています。
そのギターの音が好き。
弾き心地が好き。
思い出がある。
そんな気持ちがあるなら、その一本には十分な価値があります。
修理を重ねながら長く付き合っていくことも、ギターならではの大きな魅力です。
私自身も、これまで数多くのギターを修理してきました。
その中で感じるのは、どんなギターでも、まだまだ弾けるようになる可能性を秘めていることです。
これからも一本一本を大切にしながら、そのギターらしさを残せる修理を心がけていきたいと思っています。
LuthiLab Memo
- カテゴリ:リペア解説
- テーマ:修理か買い替えかという考え方
- 主な内容:ギターは消耗品ではなく、メンテナンスを行いながら長く使える楽器であること、価格ではなく価値で修理を考えるというリペアマンとしての考え方
- 関連する修理:リフレット、ナット交換、電装修理、全体調整、カスタマイズ
- 今回のポイント:同じモデルでも一本一本に個性があります。価格だけではなく、「そのギターに価値を感じているか」を大切にしながら、長く付き合っていくという選択も、ギターの楽しみ方の一つだと考えています。
