1980年代、フジゲンが製造していたFender Japanは、現在でも非常に高い評価を受けていますが、その中でもTL-52は、1952年製のTelecasterをモチーフにしたモデルですね。

アッシュボディ、1ピースメイプルネック、ブラックピックガード。

シンプルだからこそ誤魔化しの効かない構造ですが、その分、木材や作りの良さがダイレクトに伝わってきます。

現在でも「フジゲン製Fender Japanが好き」というプレイヤーが多い理由は、この完成度の高さにあるのかもしれません。


フジゲン製だからこその精度

1980年代のFender Japanは、フジゲンによる高い製造技術によって世界的にも評価を高めていました。

当時のアメリカ製Fenderが品質面で苦戦していた時代でもあり、その渦の中でできたFender Japanは国内外で高く評価されています。

TL-52もその代表的なモデルで、ネックの仕上げやフレットワーク、ボディ加工など、細部まで非常に丁寧に作られています。

長年弾き込まれた個体でも、ネックコンディションが驚くほど良好なものが多いのも、この時代ならではの特徴です。


リフレット=指板を削る、とは限らない

今回のご依頼はリフレットでした。

フレット交換時に指板修正を行うことが少なくありません。

しかし、塗装された指板の場合、指板修正を行うと塗装を削ることになり、基本的にリフレットの後は再塗装が発生します。

特にメイプル指板の場合は、指板の勲章(爪があたり削れた弾き跡)が目立つこともあり、指板修正を行なってしまう事で、新品同様には近づきますが、そのギターが歩んできた歴史の一部も失われることになります。


ネックコンディションが良かったからこその選択

今回の個体は、流石のフジゲン製。ネックの状態が非常に良好でした。

波打ちやねじれがなく、十分な精度を保っていたため、あえて指板修正は行わず、フレット交換後のすり合わせのみで仕上げることにしました。

その結果、オリジナルの指板塗装をそのまま残すことができました。

そして何より良かったのは、長年演奏されてきた証でもある勲章を消さずに済んだことですね。

新品のように綺麗にすることだけがリペアではありません。

そのギターが歩んできた時間を尊重しながら、これから先も演奏できる状態へ戻すことも、大切なリペアだと考えています。


ナロートールフレットを採用

新しいフレットには、ナロートールタイプを選択しました。

細めの幅を持ちながら十分な高さがあるため、ヴィンテージスタイルの見た目を保ちつつ、現代的な演奏性も得られます。

チョーキングやビブラートもスムーズになり、押弦時のストレスも少なくなりました。

オリジナルの雰囲気を大切にしながら、演奏性を向上させるには非常に相性の良いフレットです。


Telecasterらしいサウンドが蘇る

リフレット後に最初のコードをかき鳴らすと、Telecasterらしい歯切れの良さが戻ってきました。

短音弾きでも、ピッキングへの反応は速く、一音一音が立ち上がる感覚があります。

あのTelecaster特有の"ギャリッ"としたアタック感も非常に心地良く、フレットが変わるだけで、これほど印象が変わることを改めて実感しました。


ギターの歴史を残すリペア

リペアでは、「新品のように戻すこと」が正解とは限りません。

今回のTL-52は、必要以上に手を加えず、本当に必要な部分だけをリフレッシュしました。

オリジナル塗装を残し、長年弾き込まれた傷もそのまま残す。

だからこそ、このギターが持つ雰囲気や歴史も、これから先へ受け継いでいけるのだと思います。

演奏性とオリジナルコンディション、その両方を大切にできたリペアとなりました。


LuthiLab Memo

  • ブランド:Fender Japan
  • モデル / 年代:TL-52 / 1980年代後期
  • 修理依頼内容:リフレット
  • 主な作業内容:ナロートールフレットへ交換、フレットすり合わせ、全体セットアップ
  • 今回のポイント:ネックコンディションが非常に良好だったため、あえて指板修正を行わず、オリジナル塗装と長年弾き込まれた指板の表情を残したままリフレットを実施。

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