リフレットというと、
「古いフレットを抜いて、新しいフレットを打つ作業」
というイメージを持たれる方が多いと思います。
もちろん、それも間違いではありません。
しかし私が考えるリフレットで一番重要な工程は、実はフレットを打つことではありません。
本当に大切なのは、その前に行う下準備です。
ここが仕上がりを大きく左右すると考えています。
フレットは土台がすべて
どんなに高品質なフレットを使っても、土台となる指板が整っていなければ意味がありません。
長年演奏されてきたギターは、木材の動きや湿度の変化などによって、指板が捻れたり波打っていることがあります。
その状態で新しいフレットを打っても、その後のすり合わせでフレットを無駄に削ってしまい、せっかくの新品のフレットの高さを十分に活かしきれないことがあります。
まず私は、指板の状態をしっかり確認することから始めます。
指板修正は時間をかけても丁寧に
ネックにねじれや波うちが見られる際は、指板を修正してできるだけ真っ直ぐな状態を作ります。
木材は削ってしまうと元に戻せないため、まずトラスロッドでネックをできる限り真っ直ぐに調整し、削ります。
この工程は完成すると見えなくなるため、あまり注目されることはありません。
しかし、このネック調整と指板修正が整っているかどうかで、その後の作業は大きく変わります。
完成後には見えない部分だからこそ、丁寧に行いたい工程です。
フレット溝も大切な準備
もう一つ重要なのが、フレット溝の掃除や掘り足しです。
古い接着剤や木くずが残ったままだと、新しいフレットはきれいに収まりません。
わずかな異物でもフレットが浮く原因になることがあります。
どの溝でも、必ず1.5mmは溝の深さがあるかを確認しています。
見た目には分からない部分ですが、この工程も省略できません。
理想は、一度できれいに打ち込むこと
下準備がしっかりできていれば、新しいフレットは素直に収まってくれます。
私が目指しているのは、一度でできるだけきれいに打ち込むことです。
もちろん最後にはフレット上面のすり合わせを行いますが、その量は必要最小限で済むのが理想です。
たくさん削って高さを合わせるのではなく、最初から精度良く打ち込めれば、フレット本来の高さも残すことができます。
結果として、演奏性にも良い影響が出ると考えています。
一番印象に残っているリフレット
これまでにさまざまなリフレットを行ってきましたが、特に印象に残っているのが、全面にシェルインレイが施されたベトナム工房製レスポールタイプです。
通常のギターよりもインレイ部分が非常に硬く、指板修正にもフレット交換にも細心の注意が必要でした。
少し削り方を誤ればインレイとの段差が生まれたり、仕上がりに影響したりする可能性があります。
時間は通常より多くかかりましたが、その分、下準備の重要性を改めて実感した一本でもありました。
見えない工程こそ、演奏性につながる
完成したギターを見ると、目に入るのは新しいフレットです。
でも、その仕上がりを支えているのは、フレットを打つ前の下準備です。
ネックと指板を整え、フレット溝を確認し、できるだけ正確に打ち込む。
そうすることで、すり合わせを最小限に抑え、本来のフレット性能を活かすことができます。
完成すると見えなくなる部分だからこそ、一つひとつ丁寧に積み重ねることが、弾きやすいギターにつながると考えています。
LuthiLab Memo
- カテゴリ:ギター修理解説
- テーマ:リフレットで本当に重要な工程
- 主な内容:指板修正・フレット溝の清掃・打ち込み精度の重要性
- ポイント:リフレットの仕上がりは、新しいフレットそのものではなく、その前の下準備で決まると考えています。
