最近ビビるようになった。」
「弦高が急に変わった気がする。」
そんなご相談をいただくことがあります。
ネックが反っていると聞くと、「ギターが壊れてしまった」と不安になる方もいらっしゃいますが、実はネックが少し動くこと自体は珍しいことではありません。
ギターは基本的には木でできています。
木は季節や湿度の影響を受けながら、少しずつ呼吸をするように動いています。
今回は、ネックが反る理由と、季節によって調整が必要になる理由についてご紹介します。
木だからこそ、季節によって動きます
ネックが反る一番の原因は、湿度や気温の変化です。
特にローズウッドやエボニーのような、木肌が露出している指板は湿気の影響を受けやすい特徴があります。
梅雨から夏にかけて湿度が高くなると、指板が湿気を吸って膨張し、逆反り方向へ動く傾向があります。
逆に冬のように空気が乾燥すると水分が抜け、順反り方向へ動くことが多くなります。
もちろんすべてのギターが同じように動くわけではありませんが、季節によって少しずつ状態が変わるのは、木製の楽器では自然なことです。
また、そのためのトラスロッドという機構が、多くのネックには備わっています。
適切な調整を行うことで、快適なコンディションを保ち続けることができます。
特に気を付けたいのは季節の変わり目
修理や調整のご依頼が増えるのは、季節の変わり目です。
特に梅雨に入る頃や、夏から秋へ変わる時期は、湿度が大きく変化します。
それまで快適に弾けていたギターでも、
「急に弾きづらくなった。」
というご相談をいただくことがあります。
昨日まで問題なかったギターでも、季節が変われば調整が必要になることは珍しくありません。
ネックが反るとどんな症状が出る?
ネックの状態が変わると、ビビりや音詰まりといった症状が現れることがあります。
ただし、ここで一つ注意があります。
ビビりや音詰まりがあるからといって、必ずネックが原因とは限りません。
フレットからくる不調の場合や、ナットの状態が原因になっていることもあります。
そのため、症状だけで判断するのではなく、ギター全体を確認することが大切です。
保管方法で動きを抑えることはできます
木の動きを完全になくすことはできませんが、環境を整えることで変化を穏やかにすることはできます。
私がおすすめしているのは、
- ケースに入れて保管する
- 湿度は40〜50%程度を目安にする
- エアコンや暖房の熱や風を直接当てない
- 指板の状態を見ながら定期的にオイルで保湿する
といった方法です。
特にエアコンの直風は乾燥を招き、指板割れなどの原因になることもあります。
できるだけ急激な環境変化を避けることが大切です。
ネック調整は自分でやってもいい?
この質問はよくいただきます。
私自身は、正しい方法を理解していれば、自分で調整すること自体は問題ないと考えています。
ただし、一つだけ必ず守ってほしいことがあります。
それは、トラスロッドをいきなり締める方向へ回さないこと。
まずは反時計回りへ少し回して、トラスロッドが動くことを確認してください。
そこから必要に応じて時計回りへ調整する方が安全です。
最初から締める方向へ力をかけると、すでに限界まで締まっていた場合、トラスロッドを破損させてしまう可能性があります。
また、回していて明らかに固いと感じたら、それ以上無理をしないでください。
トラスロッドが折れてしまうと、新品でギターが買えるくらいの金額がかかる大掛かりな修理が必要になります。
迷ったときは、無理をせず専門店へ相談することをおすすめします。
ネックは「壊れた」のではなく、「動いた」だけ
ネックが少し反ると、不安になる方も多いと思います。
でも、それは木が季節に合わせて自然に動いた結果かもしれません。
定期的に状態を確認し、その時々に合わせて調整してあげる。
それが木製楽器と長く付き合うコツだと私は考えています。
「最近少し弾きづらくなったかな。」
そう感じたら、壊れたと決めつける前に、一度ネックの状態を確認してみてください。
少し調整するだけで、驚くほど弾きやすさが戻ることも少なくありません。
