ギターを長く扱っていると、避けられない事故があります。

その中でも多い修理の一つが、ヘッド/ネック折れです。

今回お預かりしたのは、1990年代製のGibson Chet Atkins Model

オーナー様から伺った原因は、

「輸送中の事故」

ケースに入っていても、強い衝撃が加わればヘッドへ大きな負荷がかかります。

残念ながら、この個体もネックが大きく割れてしまっていました。

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Chet Atkinsの名前を冠したギター

チェット・アトキンスは、カントリーギターの歴史を語るうえで欠かせない存在です。

親指と指を独立して動かす独特のフィンガースタイルは「Mr. Guitar」と称され、多くのギタリストへ影響を与えました。

このGibsonのChet Atkinsモデルは、ライブでも扱いやすいように設計されたソリッド構造のエレクトリック・アコースティックギターです。

一般的なフルアコやエレアコよりハウリングに強く、ステージで歌いながら演奏するギターボーカリストにも長く支持されてきました。


Gibsonに多いヘッド折れ

Gibsonのヘッドは、適度なヘッド角によって弦のテンションをしっかりナットへ伝えられる反面、後ろ向きに倒してしまった場合の衝撃等には弱い構造でもあります。

倒れる以外にも、落下したり、輸送中の衝撃によってネックが折れてしまうケースは少なくありません。

今回もヘッド付け根から大きく割れており、見るだけでも胸が痛くなるような状態でした。


ご予算を考慮した修理方法

ネック折れの修理には様々な方法があります。

塗装まで完全に復元する方法。

木部を大きく加工して補強する方法。

今回はオーナー様のご予算を考慮し、

圧着による修理

を基本としました。

しかし、単純に接着するだけでは終わらせませんでした。


見えない場所へ、2本のダボ

今回、一番こだわったのが補強方法です。

トラスロッドカバーの内側という外から見えない位置から、

2本のダボを追加しました。

ダボは割れ目に対してできるだけ直角になるよう配置しています。

こうすることで、接着剤だけに頼るのではなく、木材同士を機械的にも支えることができます。

外観を大きく変えることなく、同じ場所から再び割れてしまうリスクをできるだけ減らすことを目的としました。

見えない部分だからこそ、手間を惜しまない。

こうした一工程が、長く安心して使えるギターにつながります。

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演奏するための修理

今回は塗装補修までは行っていません。

幸い色が黒のため目立ちにくくはありますが、修理跡は近くで見ると分かります。

しかし、このギターはコレクションではありません。

オーナー様がこれからも演奏を続けるための楽器です。

限られたご予算の中で、できる限り強度を確保し、安心して弾ける状態へ戻す。

それが今回の修理の目的でした。

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ギターは弾かれてこそ価値がある

修理後はネックの状態も安定し、再び演奏できる状態まで復活しました。

このChet Atkins Modelは、ギターボーカルとして活動されているオーナー様の大切な一本です。

長年一緒に音楽を作ってきたギターだからこそ、新しいギターへ買い替えるという選択ではなく、修理という道を選ばれました。

壊れてしまったから終わりではありません。

しっかりと直し、またステージで音を奏でる。

それこそが、楽器本来の姿なのだと思います。


uthiLab Memo

  • ブランド:Gibson
  • モデル / 年代:Chet Atkins Model(1990年代)
  • 修理依頼内容:輸送中の事故によるネック折れ
  • 主な作業内容:圧着修理、トラスロッドカバー内から2本のダボを追加して補強、全体調整
  • 今回のポイント:ご予算を考慮して圧着修理を選択しながらも、トラスロッドカバー内という見えない位置から2本のダボで補強。

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